
時々、都会の喧騒から離れて、なぁ~んにも考えずに
静かなところでぼーっとしたくなる衝動、ありますよね。
今回はそんな衝動をも抱き込んでくれそうな、北海道は宗谷本線上、広々とした牧草地帯にある小さな駅”糠南(ぬかなん)”にある小さな小さな待合室のお話です。
糠南(ぬかなん)駅って?

ある日本の最北端、稚内から1時間46分のところに位置する糠南駅。板張りのホームと物置で作られた待合室のある、いわゆる”秘境駅”の1つ。
出典:ほろのべ
現在では1日1本、1両が走っているとのこと。
簡単には行きにくいからこそ、秘境駅と言われる由縁になっているのでしょう。周りは壮大な草原が広がっています。
すでにご存知の方も、いま気づいた方もいるかと思いますが、この待合室、物置なんです。物置をぺいっと設置して待合室として使用しているのです…!
その正体はヨド物置”あぜくら”
開業当初、この待合室は木造で出来ていたそうですが、昭和62年の台風により破損してしまい、同年に住民の要望で設置されたのが現在の物置待合室なんだそう。
“あぜくら”は昭和45年~平成14年に販売されたなんとヨド物置第1号商品!商品名にもなっている校倉(あぜくら)模様をモチーフにしたデザイン、丸い柱、鮮やかなカラーリングの屋根がポイント。
当時のあぜくらカタログ画像
今見るとなんだかおばあちゃんちのような、ホッとする懐かしさを醸し出していますね。
残念ながらもう現行販売はされておらず、現在ではデザインを一新し更に耐久性の高い”エルモ”として生まれ変わっています。
設置から約30年、”物置待合室”に起こった異変
設置されたあぜくらは地元の方々を始め、大切にされていましたが時が経つのは残酷なもので物置待合室”あぜくら”にもガタが目立ち始めます。
それもそのはず、設置から30年近く、通常物置の寿命は長くて20年程、さらには雪国という環境下で寿命以上に頑張っていたのだから当然といえば当然です。
扉の立て付けが悪くなり開閉が困難になったり、通気口の破損が見られるようになってきます。
その時、立ち上がった男たち
そんな様子が2017年にテレビで放映され、偶然にも当時の淀川製鋼所の社長がその様子を見ていたことがきっかけでことは動き出します。
「糠南駅のあぜくらを直しておいでなさい」
という司令が北海道の営業所へ通達されます。
司令を受けた担当の方はすぐに現地へ確認に向かうのですが、すでに廃盤になっていた”あぜくら”。
わたしの推測に過ぎませんが、部品や扉まで、もしかしたらこの待合室のために、特別生産され設置当時の状態を再現されたんじゃないかな、と。
雪深い糠南駅へ数回に渡り足を運んだ当時の担当者の方も容易ではなかったであろうことが想像できます。
糠南駅のある幌延町(ほろのべちょう)の公式HPではこのときのことを”感謝感激です”と綴っています。
息を吹き返した糠南駅の物置待合室
こうして扉の開け締めもスムーズになり、通気口も交換され物置待合室”あぜくら”は快適に使用してもらえる”待合室”へと復活を遂げました。

修繕された物置待合室”あぜくら”
この待合室の中には時刻表や、雪かき道具のほか、カゴをひっくり返して座布団が置かれただけのワイルドなのに、どこか人の温かみを感じる椅子が設置されています。定員は2名まで、といったところでしょうか。座ってみたいなぁ。
現役で佇んでいる糠南駅の待合室物置には淀川製鋼所の社長様の粋なはからいと修繕を担当された方の尽力があったおかげで、今でも地域の方や糠南駅愛好者の方々の手によって大切にされています。
あえて新品を贈るのではなく、長く親しまれた”あぜくら”を修繕するという姿勢、そこに惹かれる、憧れる!!
”物置駅”として親しまれている糠南駅には淀川製鋼所の皆様による、素敵な秘話があったのでした。
最後に
いかがでしたでしょうか。
北の荒野に佇む物置待合室”あぜくら”のある、糠南駅にまつわるちょっといい話をご紹介させていただきました。
実はこの糠南駅、すごいんですよ、これだけではなく他にも数々の伝説を生んでおり、

鉄道愛好家の猛者が-20℃の早朝にクリスマスパーティーをしよう!とチャレンジ企画を開催。第1回目に大成功を収め、翌年からはなんと町の全面協力の元、開催されているんだとか!
一般公募された”秘境駅キャラクター”コンテストが開催され、糠南駅の”ぬかにゃん”誕生!

ねこキャラには目がないんだよなぁ。かわいい。
などなど、秘境駅糠南はわたしの地元の駅は及ばないほど盛り上がりを見せています。
恐るべし、秘境駅!
単純なわたしは糠南駅の”あぜくら”に会いに行きたい気持ちと同時に物置はただ物置としてだけではなく、アイデア次第で待合室や休憩室みたいに使えるよ!ということを教えてくれているとってもいいケースだと感じました。
一言で物置といっても多様性はあなどれないですね!
今年で環境生活3年目のわたしにも、物置愛がすこしずつ育まれている予感を感じた春なのでした。